17hLの卵型セメントタンク フレデリック・コサール氏が「ドメーヌ・ド・シャソルネイ」を立ち上げたのは1996年のことです。酪農家の家系に生まれた彼は、家業を継ぐために国立乳産業学校（ENIL）で乳発酵を学びました。しかし、厳格な父親への反発からアメリカ・ボストンでの研修をわずか3週間で辞め、家業と決別する決意を固めます。そして憧れていたワインの世界に飛び込みました。 23歳で彼はワイン業界に身を立てるため、サヴォワとボーヌの醸造学校で基礎を学びます。その後、筆記具と電話、車、そして情熱だけを頼りにブルゴーニュのドメーヌに自らを売り込む日々を送ります。粘り強い交渉で信頼を得た彼は、ニュイ・サン・ジョルジュのネゴシアンでブレンダー兼クルティエの職を獲得。10年間の活動を通じて「ブルゴーニュワインを全て飲み尽くした」と豪語するほど経験を積みました。 やがて、自分の理想とするワイン造りを目指し、1996年に義理の母の協力を得てドメーヌを設立。その後、2005年には新たな醸造所を建設し、翌2006年には自身の名を冠したネゴシアン「フレデリック・コサール」を始動しました。 さらに、彼は独自のアプローチで自然派ワインを追求しています。卵型セメントタンクを導入し、熟成中の液体の動きを最適化することで、ワインに独特のまろやかさと深みを与えています。また、ブドウ本来の個性を引き出すため、畑ごとに異なる発酵手法を採用。近年では環境負荷を軽減する新しい技術の導入にも積極的に取り組んでいます。

ジョージア産クヴェヴリ（9.5hL~14hL） コサールの手元にある10ヘクタールの畑は、基本的に5人のスタッフで管理されています。繁忙期には期間労働者を雇うものの、日常的な作業は少人数で行われています。所有するブドウ品種はピノ・ノワール、シャルドネ、アリゴテで、樹齢は若いもので8年、平均50年、古樹は80年を超えます。 コサールは、自らが提唱する活きているワイン「Vin Vivant」をグランクリュの環境で表現するため、情熱を注いでいます。温度管理の徹底、粒単位での厳密な選果、SO2添加やフィルタリングの廃止、地中カーヴの設置など、品質向上のためにコストを惜しまず取り組んでいます。 また、2000年からは天然成分調合剤にホメオパシーを取り入れ、病気への耐性を強化しつつブドウの活性化を図るなど、革新への探求を続けています。 近年、ジョージア産クヴェヴリを導入し、発酵・熟成プロセスに新たな次元を加えています。この取り組みは、ワインにさらなる奥行きと複雑性を与える結果を生んでいます。また、環境に優しい持続可能な農法を進化させることで、次世代の生産者たちへも影響を与えています。さらに、ヴィンテージ解説動画などを通じて、その哲学と情熱を世界中のワイン愛好家と共有しています。