2023.12.15
Vin et Bonheur ウイスキー担当 須藤でございます。
以前こちらの記事(スコットランド6大ウイスキー産地記事リンク)でスコットランドのウイスキー産地の6つの区分を紹介しました。今回は、その中でも蒸留所が最も多い地域である『スペイサイド』と、そこで作られるウイスキーの特徴、さらに代表的な蒸留所について簡単に紹介していきます。
アイラ島と並んでウイスキーの聖地と称される産地の味わいや特徴をチェックして、今後のウイスキー選びにお役立てください!
☑この記事で解決できる悩み
・スペイサイドとは?
・スペイサイドウイスキーの傾向とは?
・スペイサイドの代表的な蒸留所
ウイスキーが生産される土地のバックグラウンドについて触れることで、これからのウイスキー選びがより楽しく、より奥深いものになります。ぜひ参考にしてください。
スペイサイドとは?
スペイサイドとは、スコットランド北側のハイランド地方東部を流れるスペイ川流域を中心とした地域の呼称です。
ただし、『スペイサイド』という名称はあくまでウイスキーの産地区分上の便宜的な呼び名であり、行政的な区分ではありません。そのため、区分けの上で隣接しているハイランドとは明確な境界線があるわけでもなく、スペイサイドに区分けされるエリアにあっても、ボトルに“HIGHLAND”と謳っている蒸留所もあります。
スコットランド全体とスペイサイドの面積は、それぞれだいたい北海道と東京都に近い広さです。
そんなスコットランドの限られた一地域に過ぎないスペイサイドに、スコットランドに約130ヵ所ある蒸留所のうち、実に4割近い48ヵ所もの蒸留所がひしめき合っているのです。
いったいなぜ、それだけ多くの蒸留所がこのエリアに集中しているのでしょうか。その理由は、今から約300年前に始まった、ウイスキーの密造時代にありました。
ウイスキーのメインストリームが「密造」であった時代、密造者達はそれを取り締まる役人の目を逃れながらウイスキーを作るために、急峻な地形を持ったこのスペイサイドにこぞって拠点を構えていました。隠れやすい多くの峡谷が存在する上に、スペイ川とその支流の良質な水に恵まれたこの地域は、酒の密造にはうってつけでした。さらに、冷涼な気候にも恵まれ、燃料となるピートにも事欠かなかったことから、密造酒時代には1,000を超える密造所が営まれていたとされています。
やがて密造時代が終わり、ウイスキーを合法的に作ることができるようになってからも、このエリアで培われた歴史とウイスキー造りに適した土地柄はそのまま後世へと続いていき、今なおスコットランドで最も多くのスコッチが作られるエリアとして世界中にその名をとどろかせているのです。
この地域で造られるウイスキーは、もう一つの聖地とされるアイラとは真逆で、スイートで華やかなスタイルの物が多く、ウイスキーが初めてという方でも飲みやすいすっきりとしたものが多く揃っています。
スペイサイド8つの地域と代表的な蒸留所
ここではスペイサイドをさらに8つの地域に大別し、その地区の代表的な蒸留所を紹介します。気になるウイスキーはリンクより飛べるカテゴリページで是非チェックしてみてください!
・フォレス地区
北ハイランドに境界を接するスペイサイド北西部、フォレスの町を中心とした地域です。現在稼働している蒸留所はひとつとなってしまいましたが、過去操業していた蒸留所跡地も存在しています。
・ベンロマック
名門ボトラーであるゴードン&マクファイル社が所有する蒸留所で、軽快で華やかな物の多いスペイサイドウイスキーの中にあっては珍しく、ピートを効かせたスモーキーな造りのウイスキーをメインに生産しています。
・エルギン地区
スペイサイド北側中央部マレイ地方の中心地、ロッシー川流域に存在する町の一帯です。ここでは有名なブレンデッドウイスキーの重要な原酒を数多く産出しています。
・ロングモーン
著名なブレンダーから評価の高いスペイサイドのトップドレッシング(ブレンデッドウイスキーの味に深みや奥行きを出すためのアクセントとなる最上のモルト)で、シーバスリーガルやロイヤルサルート等の人気ウイスキーを構成する重要な原酒となっています。また、日本ウイスキーの父とも言える竹鶴政孝氏が修行した蒸留所としても有名です。
・バッキー地区
エルギン地区の東、スペイ川を挟んだ向かい側にあるスコットランド北東部のバッキーの町を中心とした地域です。蒸留所は一軒のみですが、有名なブレンデッドの重要な原酒を産出しています。
・インチガワー
ウイスキー業界の超大企業であるディアジオが所有する蒸留所で、著名なブレンデッド「ベル」の核ともなるウイスキーです。近年はシングルモルトとしての需要も高く、海に近い立地特有の個性的なキャラクターが人気です。
・ローゼス地区
スペイサイド中央部の小さな町、ローゼスを中心とした地域です。小さな面積ですが、4つの存在感のある蒸留所が操業中です。
・グレングラント
イタリアで人気No.1を誇る銘柄で、特徴的な形をしたポットスティルから作られるクリーンですっきりとした味わいのモルトです。
・キース地区
スコットランド東部を流れるアイラ川流域・キースの町を中心とした地区です。18世紀にリネン産業で発展し、現在もウイスキー観光と繊維産業で栄える活気の溢れる地区で、6つの蒸留所が操業しています。
・グレンキース
人気ブレンデッド・シーバスリーガルの核となるモルト「ストラスアイラ」、その第二工場として建設された蒸留所です。長らくシングルモルトの瓶詰はありませんでしたが、現在はノンエイジのエントリーモデルをリリースしている他、ペルノリカール社の「シークレットスペイサイド」シリーズにラインナップされています。
・ダフタウン地区
人口1,500人程の小さな村に7つの蒸留所が密集している地区です。大規模な蒸留所があるため総生産量も多く、実質スペイサイドでも最も有名な地区となっています。
・グレンフィディック
鹿をシンボルとしたトレードマークで知られ、シングルモルトとしては世界でもトップクラスの売上を誇る銘柄を産出する蒸留所です。フルーティで飲みやすい、まさにスペイサイドといった味わいのモルトは、初めてウイスキーを飲むという方にもお勧めしやすい一品です。
・スペイ川中・下流近辺
スペイサイド北東から中央を通り南西に向かって流れる、この地域の名前の由来となったスペイ川、その中・下流にそって蒸留所が列を成している地域です。
・マッカラン
『シングルモルトのロールスロイス』の異名を取る高級シングルモルトの代名詞的存在です。シェリー樽へのこだわりは特に有名で、スペイン産のオークで造られた樽を安定的に自社調達できる数少ない蒸留所です。近未来的な造りの蒸留所は観光スポットとしても人気があります。
・リベット地区
スペイ川下流をさらに下った先にある支流、リベット川の流域にある地区で、4つの蒸留所がこの地区に所属しています。
・グレンリベット
政府公認の第1号蒸留所として有名です。過去にはその品質にあやかって数多くの「グレンリベット」というウイスキーが作られたことから、定冠詞「The」を使用することが許された誇らしいエピソードを持っています。近年は順調に増産を重ね、スコットランドのモルトウイスキーでは最大の生産量を誇ります。
まとめ
スペイサイド地域とそこで作られるウイスキーの傾向、そして各地区の代表的な各蒸留所について紹介してきました。
ハイランドのごく小さな面積に多数の蒸留所がひしめきあうスペイサイド、その味わいの傾向や特徴について少しでも掴んでいただけましたでしょうか。
これはスペイサイドに限った話ではありませんが、お店でウイスキーを選ぶ時はその地域の特徴や蒸留所ごとのエピソードに注目してみると、選ぶ楽しみ・飲む楽しみが大きく広がります!
また、弊社Vin et Bonheurではいろいろな地域のウイスキーをお好みの量で気軽に試せる『量り売り』のシステムをご用意しております。30mlからお気軽に試せるので、地域ごとに飲み比べてみるのも楽しいかもしれませんね。
この機会に、ぜひ色々なウイスキーをお気軽にお楽しみください!